朝食を食べて部屋に戻ると、瑠奈は窓を開けて外の空気を思いきり胸に吸い込んだ。視界に映るのは見慣れた近所の街並みなのに、今朝は全ての色がこれまでよりも鮮やかに見える。十年以上も瑠奈を縛り付けていた錘が外れて、まるで生まれ変わったような気分だった。

 瑠奈はスマホを手にとると、爽やかな朝の空を撮影した。SNSを開いて、撮ったばかりの写真とともにツキヒトにDMを送る。

『おはようございます。無事に十六歳の誕生日を越えることができました。ツキヒトさんのおかげです』

 実際に、不安な瑠奈の心を支えてくれたのは、ツキヒトが送ってくれたグリーンフラッシュの動画がだった。もしかしたら、緑色の太陽の光への祈りが、瑠奈の運命を救ってくれたのかもしれない。

『おはよう。連絡待ってたよ。ルナちゃんが無事に十六歳を迎えられて本当によかった。お誕生日おめでとう』

 ツキヒトからは、すぐに返信が来た。

『約束どおり、直接会って話さない? 誕生日のお祝いをしよう。十六歳になったルナちゃんに、君の知らない世界を見せたい』

 何度かのやりとりのあと、ツキヒトからそんな誘いがあった。