「瑠奈ちゃん、もし体調が悪いなら病院に行きましょう。ほら、お父さんのお友達が勤めてる総合病院が評判いいから――」
「平気。ちょっと夏バテしてただけ。それより、わたしも朝ごはん食べたい」
「もう、勝手なんだから……」
口角を引き上げて笑顔を作る瑠奈に、母がため息混じりに頷く。母は呆れながらも、一週間もこもりきりだった瑠奈が部屋から出てきたことに安堵しているようだった。
瑠奈が食卓に着くと、母が玉子粥と豆腐の味噌汁を出してくれた。
「この一週間ろくに食べてないから、胃に優しいものにしとくわね」
「ありがとう」
お粥と味噌汁の刺激の少ない優しい味が、瑠奈の体にゆっくりと染み渡る。穏やかな朝の時間を過ごせることに幸せを感じながら、母の作ってくれた朝食を噛み締めるように味わう。食べ慣れているはずの母の味が今朝は特別に美味しく感じられて、瑠奈は玉子粥と味噌汁をそれぞれ二回ずつおかわりした。
「それだけ食欲があるなら大丈夫そうね」
朝から食欲旺盛な瑠奈を見て母が笑い、父もその様子を安堵したような目で見ていた。ふたりとも、瑠奈のことを心配してくれていたらしい。