十六歳の誕生日当日は、一日中雨戸を閉め切って、ドアにも鍵をかけ、部屋から一歩も出なかった。
瑠奈のことを心配した母が、ドアを何度もノックしたり、食事を持ってきてくれたりしたけれど、ベッドの中で布団にくるまって応答もしなかった。
もう何年も前から死ぬかもしれないということはわかっていたのに、いざ誕生日を迎えると怖くてたまらなかった。
いつどこで何が起きるかわからない。その瞬間を待ちながら、瑠奈はベッドの中で震えていた。布団の中にくるまっているのに、手足はひどく冷えていて、このまま全身が冷たくなって死んでしまうのかとすら思った。
一日が長かった。恐怖に怯える瑠奈の時間は、おそろしくゆっくりとしか進んでいかない。
気を紛らわせるためにスマホを手にとって、SNSのアプリを開くと、ツキヒトが写真を投稿していた。今日の空を撮った写真だった。
雨戸を閉め切っていて知らなかったが、今日はよく晴れていて気温も高いらしい。夏雲の浮かぶ、爽やかな空が正方形のフレームの中に切り取られている。
『僕の友人が、今日を越えられることを願って』
写真と共に投稿されていたコメントに、瑠奈の胸が詰まった。これは、瑠奈に宛てたツキヒトからのメッセージだ。瑠奈のために願ってくれるツキヒトの気持ちに、泣きたくなる。
瑠奈はDMのメールボックスを開くと、二週間前ツキヒトが送ってくれたグリーンフラッシュの動画を再生した。
水平線に消える間際、緑色に輝く太陽。その閃光を見つめながら、瑠奈は願いが叶うという緑色の太陽に祈った。
どうか、無事に明日を迎えられますように――。