心配してくれるツキヒトの言葉はありがたいが、瑠奈はこれまで、何度も夢の中で鬼気迫るような痛みや恐怖を味わってきたのだ。

 あれは、近い将来瑠奈の身に襲いかかってくる現実だ。絶対に、非現実でも刷り込みでも、勘違いでもない。

『ツキヒトさんの気遣いは嬉しいけど、やっぱり会えません』

 心配してくれるツキヒトに対して少し申し訳ないと思ったが、彼には会えない。未来のない瑠奈と会うことは、瑠奈にとってもツキヒトにとっても無意味なことだ。

 何度目かになる断りのメッセージを送ると、しばらくしてツキヒトから返信が来た。

『ルナちゃんの未来の幸せを願って』

 送られてきたメッセージには、一本の動画が添付されている。

 開いてみると、それは海の沖合でゆっくりと沈んでいく夕日を撮影したものだった。太陽が少しずつ落ちて行くのに合わせて、空全体がオレンジ色に染まっていく。やがて太陽の下半分が水平線に沈み、上側に弧を描いた半円が徐々に小さくなっていく。太陽が小さな細い線のようになって、水平線に沈みきってしまいそうになる刹那、オレンジ色だった光が緑色に変化して輝いた。眩しいほどに、綺麗な光だった。