だが、実際に夢の中で何度も命を落としてきた瑠奈には、それが非現実だとも刷り込みだとも思えなかった。
改めて言語化して説明してみると、自分の運命があまりに理不尽なものに思えてきて、瑠奈の目に涙が浮かぶ。
小さな頃から、瑠奈は自分の運命を悟って人生を諦めていた。けれどそれは、十六歳で死んでしまうことの恐怖や悲しみから目を逸らすため防衛本能でもあったのかもしれない。
『ツキヒトさんに聞いてもらえてよかったです。ツキヒトさんには死ぬ前にお別れを言っておきたかったから』
『そんなこと言わないで。ルナちゃんは死んだりなんかしない』
悲観的なことばかり言う瑠奈に、ツキヒトが繰り返し励ましの言葉を送ってくれる。メッセージの文面からは、彼の優しい気持ちが伝わってくる。
瑠奈は初めて、自分の存在が丸ごと全て受け入れられたような、温かで不思議な気持ちになっていた。
『ありがとうございます。ツキヒトさんにそう言ってもらえるだけで充分です。遅いので、今日はもう寝ましょう』
ツキヒトと秘密を共有したせいか、瑠奈の心はとても落ち着いていて。今夜は予知夢で目覚めることなくぐっすり眠れそうな気がした。
そろそろほんとうに眠りにつこうとベッドに横になると、ツキヒトからの返信が届く。仰向けに寝転がりながらメッセージを確認した瑠奈は、驚いて手からスマホを取り落としてしまった。
『ルナちゃん。十六歳の誕生日に、俺と直接会ってみない?』
ツキヒトが突然、瑠奈が考えてもみなかったことを言ってきたからだ。