『今日はもう寝るかな? おやすみ』
瑠奈が十五分以上も返信せずにいると、ツキヒトからDMがきた。瑠奈の返信が遅いだけでも、さりげない気遣いの言葉をくれるツキヒト。
二週間後に瑠奈が死んで、SNSの投稿やツキヒトへの返信が途絶えたら、彼はどう思うだろうか。
しばらく迷ったのちに、瑠奈はツキヒトにメッセージを打った。
『ツキヒトさんは、わたしの人生はまだ長いと言ってくれたけど、それは違います。わたしは、二週間後の十六歳の誕生日に死にます。ずっと前から、そう決まっているんです』
瑠奈が他人に予知夢のことを打ち明けるのは初めてだった。仮に話したところで、到底信じてもらえるとは思わなかったし、自分は誰にも知られないままに十六歳でこの世から消えるのだと思っていた。
それなのに、ツキヒトに秘密を共有しようと思ったのはなぜだろう。
ツキヒトが顔の見えない相手だからということや、一ヶ月間の彼との交流が瑠奈の脳に誤作動を起こさせたのかもしれない。瑠奈は、ツキヒトにだけは、死ぬ前に別れの言葉を告げておきたいと思った。