『いつかわたしも、ツキヒトさんが行ったことのある場所に行って自分の写真を撮ってみたいです』

 ツキヒトに向かってそれを発信したその一瞬。瑠奈は普通の十五歳の女の子になっていた。

 あたりまえに明日が来て、その先もずっと変わらない未来が続くことを疑いもなく信じている、ごく普通の。

 生まれて初めて抱いた未来への願望は、瑠奈の小さな胸をわくわくさせていた。

『ルナちゃんはまだ十五歳だよね。若くてこれからの人生も長いんだから、海外に行くチャンスもたくさんあるよ。大学生になったら今以上に自由な時間もいっぱいできると思う』

 これからの人生も長いんだから……、うらやましい──?

 何げなく発信したであろうツキヒトの言葉が、瑠奈の胸にグサリと突き刺さった。これまで人生に絶望していた自分が、一瞬でも、未来の想像をしてしまったことにゾッとした。

 ふと学習机のカレンダーに視線を向けると、今はもう七月も終わり。気付けば、瑠奈の誕生日が二週間後に迫っている。

 瑠奈の人生は長くなんかない。あと二週間で終わるかもしれないのだ。