十六歳で命を落とす予知夢は定期的に見続けているが、ツキヒトとやりとりをするようになってから、自分の運命を憂いて暗い気持ちになることが少なくなった。

 母親にまで「最近、機嫌が良さそうね」と声をかけられるほど、ツキヒトとの知り合ってからの瑠奈は何かが確実に変化していた。

 ツキヒトとやりとりを初めて一ヶ月が過ぎた頃、彼が数年前のオーストラリア旅行で撮ったという写真をSNSに投稿した。それはエアーズロックの写真で、海外の有名な観光地ついてほとんど無知な瑠奈でも知っている場所だった。

 その夜のDMのやりとりでは、ツキヒトが行ったことのある外国について話が盛り上がった。

 社会人になってからはまとまった休みが減ってあまり海外に行けなくなったそうだが、大学時代のツキヒトは春や夏の長期休暇に必ず海外へと飛び出していたらしい。そのために、普段はアルバイトに勤しんで旅行資金を稼いでいたのだそうだ。

 ツキヒトの話は、瑠奈にはまるで想像のできないことばかりだった。もし十六歳を過ぎても生きられたなら、自分もツキヒトのようにアルバイトをしたり、一人旅をしたいと思ったりするのだろうか。

 ツキヒトの話を聞いた瑠奈の胸に、生まれて初めて未来への願望のようなものがひとつ思い浮かんだ。