スマホの画面をスクロールして上に戻り、Tsukihitoのプロフィール欄を確認すると「旅先や出張先で、趣味で写真を撮っています」と書かれていた。その文面を見る限り、プロのカメラマンというわけでもないらしい。

 それなのに、こんなにも人を魅了する写真が撮れるのか……。周囲には関心を持たないようにして生きてきたはずの瑠奈の心が、珍しく揺さぶられていた。

 Tsukihitoの過去の投稿写真をもっと見てみたくて、スマホの画面をまた下へとスクロールする。
たくさんの投稿の中で瑠奈の目に止まったのは、海岸で撮った日没の写真だった。砂浜ではなく、岩場が多い海岸だ。海にはいくつもの岩礁が浮かんでいて、オレンジ色の太陽が半分ほど水平線に沈みかけている。深い青色の海に、ところどころ夕日のオレンジ色が混ざり合っていて美しい。

 こんなにも綺麗な写真を撮れる人が、どうして瑠奈の写真に興味を持ってくれたのだろう。ますますよくわからないが、瑠奈のなかでTsukihitoに対する印象が変わったことだけは確かだった。

 ブロックしようと思ったけど、DMで少し話すくらいなら……。

 瑠奈のなかに、そんな気持ちが芽生えたのは、夜眠る前に美しい写真を見てテンションがハイになっていたせいかもしれない。