「ラドフォード公爵も、今回こそはやってもらいたいって言ってたし。ジークだってそれは分かってんだろ?」
「それは……分かってる。だから出席を確認された時に了承した」

 彼が、テーブルに置いた手を強く組む。

(うわぁ、すっごく嫌そう)

 エリザは、ルディオと揃ってかける言葉を見失った。そこで強い意志が覗く顔をするのかと思いきや、ジークハルトは脆弱マックスの相貌でがたがた震えていた。

(ここまで震えるかっこいいイケメンって、珍しいかも……)

「えーと、簡単ですよ。ラドフォード公爵様が言う令嬢達と話しをすれば、ミッションコンプリートです。これさえクリアしたら、あとは好きにできます」

 エリザは、手ぶりを交えて説明した。

 ジークハルトが、右へ左へと視線を泳がせたすえに、観念したように項垂れた。

「うぅ……っが、んばります」

 喉から絞り出すような決意表明だった。

 本音をこらえた表情は、やっぱり子供っぽい雰囲気をエリザに感じさせた。泣きそうな顔をしていたが、彼は反論しては来なかった。