いったん席を外して案内されたのは、ラドフォード公爵の書斎だった。

「ここ三日ほど、職場でもジークの調子はいいそうだ。使者が報告を持ってきてくれたよ。ありがとうエリオ」

 いつまで経ったも呼ばれ慣れない男性名に、彼女は鈍く反応する。

「はぁ、そうなのですか。私はとくに何もしていないのですが……」

 毎日ジークハルトに、令嬢にしつこく話しかけられただとか、メイド達の視線が居心地悪いだとか、情けない泣き言を聞いている程度だ。

(まぁ、それがストレスの解消になってはいるかな)

 つまり、主人のように彼の動向に常に付いている状況は、少しは役に立てていると思っていいのかもしれない。

「明日、王宮で舞踏会がある。そこにも同行してもらいたい」
「はぁ、王宮、ですか……」

 あまりにも住んでいる世界が違う話で、実感で持てない。

「えっと、普段はルディオがサポートしていた感じですか?」