「謙虚だなぁ。魔法使いは強いほど偉いんだ、堂々と胸を張ってりゃいいのさ。噂の内容がどうであれ、魔物を一瞬で塵にしちまえるのは事実なわけだろ?」
「確かに魔物は灰になりますが……」

 灰にするわけではなく、勝手になるのだ。

(そもそも私は魔力を持っていないからなぁ)

 魔法使いだなんて自分から名乗ると、詐欺みたいな感じがして後ろめたいのだ。

 かわいそうではあるが、症状の確認のため、その後も検証は続いた。

 ジークハルトは甲冑を着込んで顔さえ見えない女性に悲鳴を上げ、扉の向こうで談笑するメイド達の声に身体を震わせた。

 蕁麻疹は、浅ければ十分ほどで引くことが分かった。

 しかし甲冑の手袋越しだろうと、僅かにでも触れると容赦なく蕁麻疹が現れることも理解した。

(これは、かなりの重度だな……)

 自分が治療係なのはまずいのでは、という不安が再び頭をもたげた。

 そしてラドフォード公爵が用意した、最後の仕掛け。

 ジークハルトは仕組まれているとも知らず――。