料理長は、一階の広い厨房で若いコックと共に夕食の仕込みをしていた。焦げ茶色の癖のある髪を一まとめにした中年男で、豪快な笑いと共にエリザの頭を叩き「俺ぁサジだ」と名乗った。

「にしても、変身魔法でここまで幼くならなくったっていいのになぁ」

 悪意がないせいで、余計にぐさりときた。

「姿は魔法で変えていません」
「え? じゃあ身長も地なのか。ひょろひょろだし、もっと食べた方がいいぞ」

 作った笑顔が崩壊しそうだ。

(ううん、だめ。第一印象、大事……)

 十八歳なので、もうこれ以上伸びないのでは、とエリザはひっそりと思っただけに留めた。

「従業員は与えられている休憩室でそれぞれメシを食うんだが、魔法使い様はどうする? なんなら部屋に持っていくが」
「あの、私のことは〝エリオ〟と呼んでください。ジークハルト様に同行することが多くなると思うので、食べられそうであればこちらに来て一緒にとる、という感じでも構いませんか?」
「おぅ、いいぞ」