「はい。坊ちゃまの代わりに護衛業に入っているかと」

 直して間もない扉を、また壊すというのも気が引ける。

「壊すことが前提なのでございますか?」
「思考がつい口からこぼれましたが、違います。誤解されないように言っておくと、私は物理的に物事を解決しようとは考えていません」

 凛々しい顔をしたエリザを、セバスチャンはそうかなという顔で見ていた。

 道のりと扉の形を覚るために、彼に案内されジークハルトの私室へ向かう。とにかく屋敷は広くて、扉がたくさんあるのもややこしかった。

(時間がかからず説得できるといいけどなぁ)

 彼女はそう祈りながら、扉を二、三回ノックした。

「ジークハルト様、いらっしゃいますか? 本日より、短い間ですが治療係に就任した〝エリオ〟です」

 呼ばれるのと同じく、自分でそう名乗るのも慣れない。

(友達はルディオしかいないし、他からは【赤い魔法使い】としか呼ばれないもんな)