目を向けてみると、ラドフォード公爵がうるっとした目で見つめていた。

「素晴らしいよっ、エリオさん!」

 その縋るような眼差しに、エリザは嫌な予感を覚えて身を強張らせた。

「……あの、別に私は素晴らしくもなんともないんで」

 回避しようと思って退出を申し出ようとした直前、テーブル越しに激しく手を包み込まれた。

「ひぇっ、顔の圧がすごいっ」

 じゃなくて、逃がさないとする手の強さが凄まじい。

「ラ、ラドフォード公爵様、あの」
「少しの間だけでもいいから、ジークの治療係にあたってもらえないだろうか!?」
「は? ……いやいやいやっ、彼はちょっと触るだけでも蕁麻疹が出ますし、同性の方を雇った方が絶対にいいですってっ」

 今のところ対面での会話はセーフだが、あれだけの女性恐怖症となるとバレる危険性がかなり高いように思える。

 バレたら、騙したなと暴れられる可能性はないか。

 失神されたらされたで、罪悪感が国を出るまでずっとついてきそう……。