いや、そうではなく、なぜ面談相手にクッキーを勧められているのか。

「好きだろ? 食べてけって」

 ルディオが言う。

(あ。出すならクッキーで、とでも言ったんだな?)

 まったく、人の個人情報を勝手に流さないでほしい。

 長居する気がなかったエリザは、気が進まないままクッキーを口に運んだ。だが、一口食べて大きな赤い瞳を見開く。

「うわっ、美味しい! しっかり甘くてびっくりしました」

 素直な感想を口にした。

 その厚みがあるクッキーは、新しく淹れてもらった紅茶に蜂蜜を入れない方がよく合う。

(さすが貴族の屋敷に出される高級菓子)

 ジークハルトが、その様子にまた驚かされたような顔をした。やがて小さく噴き出して言う。

「僕の話しを聞くだけではつまらないでしょうから、甘くて美味しいので、好きなだけ召し上がってください」
「そんなことはないのですけれど――有り難くいただきます」