ラドフォード公爵の話では、ストレスがどうとかで、どの治療係候補も面談は三十分以内にするようにしていたと言っていた気がする。

(話はだいたい聞けたし、そろそろ帰ろうかな)

 その時、新しい紅茶と別の皿が乗った盆を持ってセバスチャンがやって来た。倒れたままの扉を器用に踏み越えて向かってくる。

(……あれ? お代わりなんて聞いてないけど?)

 セバスチャンが、初めて見るニコニコとした笑顔でエリザを見降ろした。

 空になったティーカップを置き、退出のタイミングを考えた矢先だったのでエリザは困惑した。

「新しい紅茶と、こちらのクッキーをどうぞ」
「いや、あの、私はそろそろ――」

 エリザが断ろうと両手を胸に上げた途端、ジークハルトがクッキーを手に取った。先に手本を見せるよう齧って、微笑む。

「侍女長モニカの手作りクッキーです。とても美味しいですよ、どうぞ」
「はぁ。手作りなんですね……」

 先日、覗き見して目元にハンカチを押し当てていたメイド達を思い返す。