「うわぁ、それはトラウマになるわ……」

 エリザは、思わず同情の眼差しを向ける。

 同じ感想を抱いた顔をしつつ、ルディオがテーブルの下で彼女の足をつついた。

「いつも誰かが飛び込んで助けてくれたのですが、口を押さえられて、もう駄目だと思った時もありました」

 ジークハルトは膝の上で拳を握りしめ、青い顔をテーブルに向けていた。思い返すだけでも恐ろしいと震え上がっている。

 そんなに超絶天使な容姿だったのだろうかと、エリザは想像する。

 目の前の美しい騎士を見ていると、そんな印象が一切ないのでイメージが付かない。

「それ以降でしょうか。女性を見ると当時の恐怖が蘇るように、震えと吐き気が起こり、少しでも触られると蕁麻疹が出て、気絶してしまうようになりました」

 とにかく、彼には同情しかない。

(……でも、やっぱり立派な〝騎士〟だしなぁ)

 身体はしっかり鍛えられていて、軟弱な細さというイメージはない。副隊長への昇進が確定していて、周りの者達からも騎士としての腕は信頼されている。