回想するジークハルトは話すことに集中していたので、幸いにもエリザの呆れたような表情に気付かなかった。

「外に出ると恐ろしい黄色い声を上げて騒ぎ立てられ、僕の意見も関係なく、女性達の喧嘩が始まります……」

 そして七歳になった頃から、ジークハルトの苦難は加速する。

 身体付きが大人になり始めた少女達からも、言い寄られるようになったのだ。

 まるで強烈なフェロモンでも振りまいているかのようだった、というのは貴族令息としてそばで見ていたルディオの感想だ。

 声をかけてくるだけでなく、女性達はアピールすべく腕に手を絡めたり、必要以上に身体を触られることも増えた。

 そして、女性への恐怖が決定的になったのが、日々の精神的な疲れから体調を崩した頃に起こった一つの災難だ。

「……年上の大人の女性に、何度か押し倒されてしまうということが起こったんです」

 そのうちの数人は、公爵邸に入ったばかりのメイドと教師だった。彼女達は仕事の立場を利用し、幼いジークハルトに夜這いをかけたのだ。