性別が勘付かれて拒絶されるようなら、ここで辞退すればいい話なので心構えは楽だった。

 なのに、ルディオの方が緊張しているみたいだ。

「……えっと〝彼〟が〝エリオ〟なわけだけど……どう?」

 なんだかルディオがあやしまれそうな感じで確認する。

(どうしても私を引っ張り込みたいわけかな?)

 そんなことを思って、腕を組んでじろりと目を細めた時だった。

 図星だったのか、ルディオが視線を最大にまでそらした。すると彼に引き起こされたジークハルトが、こちらを見て安堵の息をついた。

「はじめまして、僕はジークハルト・ラドフォードです。どうぞ入ってください」

 まったく違和感を抱かれなかったのか、入室を促された。

 近衛騎士で、一つ年上の公爵令息から敬語を使われるのが慣れない。

 この国は、身分に関係なく強い魔法使いを特別視するところがあった。医者と同じく先生扱いなのかなと思いつつ、エリザは足を進める。

(近付いたら異変が起こるかも?)