一瞬、青年の容姿には驚かされたものの、気が高まっていたこともあってすぐ冷静に述べることができた。

 初めて目にした侯爵家嫡男、ジークハルト・ラドフォードは、驚く表情も美しいと思わせる端正な顔立ちをしていた。

 完璧で、まさに理想の王子像を思わせた。
 切れ長の青い瞳は優しげで、上品だと感じさせる色合いの栗色の髪。同じ色の睫毛も長くて、引き締まった肢体は軍服でさえ気品をまとわせている。

「……あなたが、噂の【赤い魔法使い】?」

 部屋の中央で尻餅をついていたジークハルトが、呆けたようにゆっくりと瞬きした。

 赤い髪と目が珍しいみたいだった。ルディオから話は聞いていたようだが、想定外と言わんばかりの顔だった。

「はい。私のことは、どうぞ『エリオ』とお呼びください」
「こんなに小さな方だったとは……」
「あ?」
「っすみません」

 条件反射のように凄むと、ジークハルトがすかさず謝ってきた。

(恐ろしい魔法使いだという噂のせいで、恐縮しているのかな?)