「ジークハルト様は、可愛い人ですよね。ひとまずは私だって初めてなので、まずは交際からということでお願いします」

 彼は、呪いが解けたばかりだ。

 これまで女性に恐怖して避けまくっていた後遺症で、モニカ達に悲鳴を上げていたようなことを改善していかないと。

 婚約とか、そういうことは忙しくてすぐに考えられそうにないから。

「だって私は、まだあなたの治療係、ですからね」

 ジークハルトは消化俘虜穴ような息を吐いていたが、口元に小さな笑みが戻って、エリザを強く抱え直していた。

「まぁ、あなたには可愛がられたいと考えていましたから、可愛い人という感想も誉め言葉ではありますし……婚約はきちんと許可を取りますから、まずはそれを目指して頑張ろうと思います」

 呪いの間の行動を一時忘れてしまっていたエリザは、彼が『頑張る』とどうなるのか――なんて、この時はまったく思い浮かばなくて。

 彼が抱き締めただけで大人しくているなんて、今だとだったと、このあとから知ることになるのだった。


                          了