「呪いが解けても、何も変わらないのを見た時に真っ先感じたのは『離れなくていいんだ』という安心でした。このまま、さよならしたくないなって。子供のふりをやめて隠しもせず迫ってきたジークハルトに、まんまと心を持っていかれた――のだと思います」

 初めてのことだから、よく分からない。

 キスをされたいと思われたのも、あきらかに子供はないのに、子供みたいに食べさせられたり構われたりしたのも――。

 朝目が覚めて、ジークハルトが『会いに来た』と告げた時、エリザは確かに切ない気持ちだってすっかり飛んでいったのだ。

 それだけは、彼女も分かっている確かな事実だった。

「そうか。『思う』は余計だが、エリザが初めてなのは嬉しいですね」

 ジークハルトが、嬉しそうにして頬をすり寄せてきた。

「それなら、このまま結婚してもいいですか?」
「気持ちが早いです。押し倒したい魂胆だったら、拒否します」
「…………朝の自分の行動を今になって反省しました」

 さっきの反省は本気ではなかったのか。

 まったく、と思いながらもエリザは笑ってしまった。彼に身を寄せてみたら、初めて古郷を離れてから自分の居場所を見つけられたような安心感に包まれた。

 その腕になら甘えていいのだと、頼っていいのだという初めての安心感だった。