「お、おい、エリオ?」

 ルディオが恐る恐る声をかける。

 エリザは無視すると、すうっと息を吸い込んでファイティングポーズを取った。

「恐れ入りますが、ジークハルト様。扉の前から離れて頂けますか?」
「は?」

 ルディオと、室内からの声が重なる。

「そちらから素直に開けて頂けないのなら、力づくで突破します」

 幸いにも、ラドフォード公爵からは『全面協力するので好きにしていい』との言葉は頂いている。

 ならば与えられた役目を果たすためにも、邪魔なものは物理的に排除するまでだ。

「ちょっ、待てエリオッ」

 ルディオが止める声がする。

 その時には、エリザは勢い良く扉に拳を叩き込んでいた。

 怪力の指輪の効果を受けて、硬質な扉が砲弾のような威力を受けてしなりを見せた。次の瞬間には、壁から外れて向こう側へと落ちていた。

 ルディオが唖然としている。

 エリザは、豪華な部屋の中央で尻餅をつく美貌の青年に目をとめ、挑発的ににっこりと笑いかけた。

「初めまして、あなたがジークハルト様ですね? 私は【赤い魔法使い】のエリオと申します。面談にまいりました」