こういう時、きちんと紳士っぽく言ってくるのはずるい。

「……いちおう返事は聞くつもりだったんですか?」
「もちろんです。確実にあなたを引き留めたくて、まずは誰も結婚の申し込みなどできないように法的に処置をしました」
「どうして純粋な気持ちでいながら、そう怖い行動にいくんですか」
「え? 何か問題でも?」

 ジークハルトの目は真っすぐで、エリザは本気で言ったのだと分かって、ちょっとくらくらしてきた。

「できるだけ意識してもらおうと接してきましたから、うまくいけはほだされてくれるかな、と」
「ジークハルト様、それなんか黒い……」
「エリザを手に入れたかったからです。抱擁も、キスも、俺の特権にしたかったんです」

 ふっと彼の顔が迫ったか思ったら、エリザはきゅっとキスをされていた。

 それはあっという間のことで、彼女は恥じらう暇もなかった。

「あなたにまだそういう目で見られていないのなら、このあと確実に落としていけばいいかな、と思っていましたし」