(呪いがなくなっても、ちょっとおかしい、かも……?)

 彼は女性との交流経験が幼少期以来はほぼないので、そう考えるとかなり極端ではあるというか――。

「まずはその『仮の婚約』について聞きましょうかね。すでにちゃっかり仮の段階まで婚約を押さえてしまったのは、なぜですか?」
「それは……えぇと、すみませんでした。あなたを誰にも盗られたくなくて」

 そんなに怖い感じの高圧的な聞き方になってしまっただろうか。ジークハルトの口調と顔に『だいぶ反省してます』と書かれていた。

 エリザは「別に怒っているわけじゃなんいですけど……」と、小さな声で言った。

「怒っていないんですか?」
「私だって悪いことをしましたからね。ルディオに協力して、男だと言ってあなた様に会いに行って、男だとラドフォード公爵様達とグルになって偽ることにして、それでいてずっと偽名を使っています」

 口にすればするほど、抱いていた反省は増した。

 エリザは、目を丸くしているジークハルトと顔を突き合わせた。彼の両肩にぽんっと両手を置き、固定すると彼が驚く。