「勇者と聖女が造り上げたものだろう。とすると、その怪力の恩寵は君が一人ではなくなったら、次の役割まで持っている気がするんだ。たとえば取ることができた相手に限定して使える魔法具にもなれる、とかね――私としては、ぜひその異国の術がかかった指輪を調べさせて欲しいと思っているんだが、いいかな?」

 指輪はジークハルトが持ったままだ。

 あれがないと少々心細いのだが、王都は安全な場所ではあるので、エリザが受けた戦闘技術だけでもじゅうぶんだろう。

「いいですよ」
「ありがとう。ジークからあとで受け取っておくことにしよう。指輪を預かっている間の護身用の手段に関しては、私の方で何か考えておこう。それから――私としても君がここに残ってくれるのなら、嬉しいけどね」

 さらりと告げられて、エリザは言葉が詰まる。

 昨日、分かれを思ってとても悲しくなったばかりだった。それが今朝にはすべてなくなってしまった。

 状況は昨日の真逆すぎるほどに違っていて、だからジークハルトのことも、馬車の中で叱ることなんてしなく、ルディオと三人で『遅刻したらとんでもない!』なんて、普通に話していたわけで――。