それを、室内に残された男性陣が黙って見送った。

 ジークハルトが落とした爆弾発言のせいだ。全員の視線がぎこちなくエリザの方へと戻ったところで、ルディオが口を開く。

「えーと、友人として聞くけど…………え、何、お前キスされたの?」

 エリザは、そっと視線をそらした。

「……ちょっとかすった、くらい……?」

 ジークハルトに、どこからかは定かではないが途中からは女性だとバレていた。

(それなのに甘えてきたの?)

 それでいて『呪いが解けても――』だなんて先日彼に持ち掛けて、キスを死守したせいで、今日になってそれを奪われてしまった。

「あれが私のファーストキス、になるのか……」

 エリザはふっと乾いた笑みをもらした。

 今になってキスの出来事をゆっくり振り返れたわけだが、精神的な疲労の方が大きすぎたせいか、大袈裟な反応とか何もできない。

 というか、実のところそこまでのショックはない――気もしている。

(気のせいなのかな、朝から疲れすぎたせい?)