ラドフォード公爵の顔色があまりにも悪かったので、エリザは思わずベッドから飛び降りて駆け寄った。

「あのっ、公爵様大丈夫ですか?」
「怖い状況だったのに、なんて優しい子なんだろうね……」

 見つめ返したラドフォード公爵の目が、娘の安全を確認したみたいに目が潤む。

「私は大丈夫だよ、君は大丈夫だったかい? 服も乱れていないみたいだが」
「はぁ、まぁ、大丈夫です」

 ファーストキスを奪われてしまったので、全部は大丈夫ではないが、まではこの事態をどうにかしないといけない。頭もまだ絶賛混乱中だ。

「皆様と一緒に駆け付けてくださって、ありがとうございます。でも……この状況って、いったいなんですか?」

 問うようにセバスチャンに目を向けると、安心とも呆れ友つかない吐息をこぼされた。

「後で説明しますから」

 かなり頭が痛いみたいな仕草でそう言われてしまったら、何も言えなくなる。

 使用人一同がエリザの無事を確認して胸を撫で下ろし、それからジークハルトを再び睨みつけた。