朝に、なんつーことをさらりとしようとしているんだ。エリザは慄き、首をゆるゆると左右に振った。

「ふふ、そう可愛い涙目をされてもやめません。俺はきちんとあなたが納得するまで待ちましたよ、呪いが解けてもキスしたい俺の気持ちは変わりません」

 意味が分からない。ほんと、どうなっているんだ。

(こ、これは確実に『怪力の指輪』の出番……!)

 エリザはハタと思い出して、左手を見た。

 だが「ん?」とジークハルトも見た方向に気づいた。おもむろに手を伸ばして、彼女の指輪に触れる。

「これは何かの魔法具ですよね? なら、取りましょうか」
「えっ、あ!」

 エリザは『嘘……』と思った。

 なんと一度も外れることがなかった指輪が、彼の指につままれた途端、普通の指輪のように、するりと抜けていってしまったのだ。

 信じられない光景を前に、彼女はさらなる混乱に突き落とされた。

 ジークハルトは、けれどエリザの私物だと考えてくれたのか、それを自分のズボンのポケットに入れた。そして彼女の手首を掴み直す。