そんな言い方をされたら確信が持ててしまって、安心などできなくなった。

 頼むから、顔と合わない台詞を口にしないで欲しい。余計に怖い。

(――じゃなくって!)

「というか、あなた様はそういう経験とか欲求も全然なかったのでは!? というかっ、ほんとなぜそんなことになるんです!? 意味が分かりません!」

 エリザは混乱の末、思わず叫んだ。

「ずっと我慢していたんですよ? ほら、この前の、お忘れですか?」
「あ」

 この前、というと、今と同じ状況になった日のことだ。

(そういえば二回目でしたね。私の頭、『危機感を覚えるのなんでかな』とか、なんでそうすぐ前回の危機感も忘れるのかな!?)

 ジークハルトがあまりにも子供っぽかったから、すっかり忘れていた出来事だった。

「えぇと……つまり、キスしようとした時の……ですよね?」
「ええ、続きをさせていただきます。もちろんそれ以上もしますけど、今度こそさせてくださいね」

 ジークハルトは実に爽やかな笑顔だ。