掛け布団が剥ぎ取られた。その代わりみたいに、ジークハルトがまたがってくる。

 そうなるまで、本当にあっという間のことだった。

「…………は?」

 理解が追いつかず、エリザは数秒ほどこちらを見下ろしているジークハルトの美貌を見つめていた。

 彼女はベッドに仰向けに横たわっていた。

 そして目の前には、自分にまたがっているジークハルトの姿がある。

 彼はいつの間にかエリザの手首も掴んで、左右に開かせるようにして押さえつけていて、シャツ姿を隠せない。

「え、何これ」

 ようやく、まともな声が出た。

 困惑のままに問い掛けたつもりだったが、ジークハルトが状況に似つかない、人懐こい顔でにっこりと笑いかけてきた。

 つられてエリザも笑い返したものの、笑みは当然引きつっていた。

「……あの、ジークハルト様? なんで私は押し倒されているのでしょうか?」

 危機感が現実味を帯びてきて、彼女は膝頭を合わせて身をよじる。大人が、ベッドの上で相手を組み敷く意味が分からない年齢ではない。

 すると彼が、天使のような純真無垢な極上の笑みが浮かべた。

「その辺の知識はあるようで安心しました」