「打ち合わせた通りいるよ。ジークには出掛けると言って、二階の覗ける位置で待機する予定……っておい、そこで引くなよ。夫人が亡くなってから、余計ジークを溺愛しているんだからしょうがないだろ」
「うん。顔が奥様に似ていると何回か言われたね」

 親バカ目線を外すと、髪の色がそっくりだとは理解した。

 そうしている間にも、両開きの大きな扉の前まできた。

「ここがジークの部屋だ」
「……正直、いつもルディオから聞いていたヘタレ野郎の面を拝んでみたいとも思うけど、開けたくないような気もする」
「言葉だけ聞くと、まじで男の子だなぁ。どんな育てられ方をしたんだ?」

 スパルタな不良魔術師団長を見て育ったんだよ。

 エリザは心の中で思った。

「面倒そうって顔にも書いてあるけどさ、俺は今回付添い人だからあまり協力できないし、とりあえずお試しの面会、頑張れ?」

 まず扉を開けさせるところから、エリザの仕事だ。