「泊まりたいところだけど、仕事用品も全部屋敷にあるしな。いったん帰るよ」

 知らせを出していた彼の迎えの馬車も、もう到着しているそうだ。セバスチャンか見送ると言った。

「エリオ、お前もちゃんと寝ろよ。読書で夜更かしするんじゃねぇぞ」
「分かってるよ。私だって明日は『仕事』だもん」

 明日までは治療係としてすることがある。最後まで気を抜かずに取り組むつもりだ。

 セバスチャンに続きながら廊下を向こうへと歩いていくルディオが「男なのに『もん』って」と笑っていた。

「まぁいいや、また明日の朝な。早い時間に会おう」
「うん、おやすみ」

 肩越しに手を振ってきた彼に、エリザも手を振り返した。

               ◆

 湯浴みをしたのち、魔術師団のマントコートとジャケットを椅子の背に引っかけて、エリザは本を持ってベッドに潜り込んだ。

 開いたのは、すっかりハマってしまった児童文学だ。

 どの物語も絵本と同じく、たくさん魔法が出てきて面白い。この国では魔法の歴史や種類の勉強も兼ねてそうなのだとは屋敷の人達も教えてくれていた。