ここを出ていく前に、子供っぽさもなくなったしっかりしたジークハルトを目に焼き付いてから、行こうと思う。

 それが、エリザがこの寝室に来るまでに決めた覚悟だった。

「おやすみなさい、ジークハルト様。良い夢を」

 自然と手が伸びて、彼の頭を撫でていた。

 ジークハルトが嬉しそうにそれを見た。そっと離すと、彼はセバスチャン、それからルディオを見た。

「おやすみ」

 二人にもそう笑いかけると、小瓶の中身を一気に飲み干した。

 空になった小瓶を、セバスチャンが回収した。ジークハルトの身体は数秒もしないうちにふらりと揺れて、後ろに倒れ込むようにして枕にぼふっと後頭部が落ちたかと思ったら、穏やかな寝息が続いていた。

 彼が起きないとは分かってはいたものの、三人揃ってそっと部屋から出た。

「やれやれ、これで明日の朝、薬の効果が確認できたらお祝いものだな」
「そうだね」

 ルディオが背伸びをした隣で、エリザも苦笑をこぼした。この屋敷のみんなが喜びに沸くだろう。

 彼は、気になるので明日の朝一番にはまた来ると約束した。