エリザはその間に別室で食事でも――と思っていたのだが、使用人達に巻き込まれる形で、始まった彼らの夕食会を出入り口からしばし窺うことになってしまった。

「うっうっ、坊ちゃん苦労してましたもんね」

「今日でだいぶ報われると思うと、俺、俺もっ、涙で前が見えない……!」

 エリザの背後から室内を覗き込んでいる男性使用人も、マジ泣きしていた。

 周囲には他にも、料理長サジ、コック達、侍女長モニカや執事のセバスチャン、見慣れた顔のメイドや庭師まで集まっていた。彼らは揃って感涙し、ジークハルトの食事風景を一心に眺めている。

「私、明日から着付けをさせてもらえるのねっ」
「夜会の服とか、色々着せたいものがたくさんあるのよねぇ」
「これで堂々と女を連れ込んでもオーケーだよな?」
「サジ、それはやめておきなさい。屋敷の風紀を乱そうものなら容赦しませんわよ。それからリリベル、そういった行動を開始するのは、まず明日にエリオ様の許可が出てからということを忘れないように」
「はーい!」

 メイドたちが揃って元気よく答えた。

(――どうしよう、このテンションに全然ついていける気がしない)