「あの、――」
「ああ、しかしこうして魔法薬を調合できる立場になれたのは幸いです。魔法にかかれる仕事ですから」

 エリザが戸惑いを浮かべたら、彼が初めてちょっと笑みを浮かべた。

 どうやら、皮肉で言ったわけではなかったらしい。

 少し癖がある人なんだろうなと思って、彼女もまた「安心しました」と笑い返した。

「それから、この解呪薬として殿下から頼まれた魔法薬ですが、原料はかなり苦みを持っていましたから、勝手ながら余分に糖分を追加させていただきました」
「ジークハルト様は普段から菓子も口にされますから、大丈夫ですよ。丁寧な説明をありがとうございます」
「いえ、こちらこそ、お時間をありがとうございました」

 エリザが深々と頭を下げたら、向かいの椅子にいたハリマも最後は淡々とした口調の中に人間味を滲ませて、同じように礼を返してきた。

 彼は早々に帰ることを伝え、テーブルのベルを鳴らした。

 立ち上がると、ハリマは手を差し出してきた。握手を求められていると気付き、エリザは彼の細い手を握り返した。