解呪薬を持った使者がやってきたのは、エリザがジークハルトとルディオと共に、夕方に公爵邸に戻ってすぐのことだった。

 どうやら事前説明が必要な魔法薬らしく、治療係の【赤い魔法使い】であるエリザの帰宅に合わせて来訪したらしい。

 ジークハルトはきょとんとしていたが、不思議と驚きはないみたいだった。彼には、フィサリウスが頼んでいた『呪いを解く薬』ができたのだとざっくり説明したら、そうなんですねと笑顔で納得してくれた。

(呪いにかかっている本人だから、あまり理解はできないのかも……?)

 ジークハルトの離れたがりもなく、エリザはそこで一時的に別れ、ルディオに彼を任せた。

 そして、別室で解呪薬の話を聞くことになった。

「ジークハルト様は魔力を持っておりませんので、術を解くには一晩かかります」

 橙色のローブで細身の全身を隠した魔法協会の魔術研究員は、ハリマと名乗った。年齢は三十代後半くらいだ。

「魔力に耐性がないので深い眠りに落ちるはずです。術が完全に解ければ勝手に起きますから、心配はされませんようにと公爵様にもお伝えください」
「はい、必ず」