すぐ横から、髪に顔を埋めた彼が息を吸う音がする。

 適当に言葉を返されている感じかするのは、気のせいなのだろう。彼に掛けられている『呪い』は術者以外の女性を退けるためのものだ。

 つまるころ、そのせいでざわついている胸を鎮めたい、ということなのだろう。

(彼の意見はものすごく尊重してあげたいんだけど、うっかり胸元に触れたら、すがに絶対女の子だとバレるよねっ?)

 服で隠れてしまえる胸とはいえ、サラシなどで固くして隠しているわけではないので、うっかり触られでもしたら確実に女だとバレる。そんなことになったらジークハルトがパニック状態になって、久しく見ていないストレスの爆発とやらを見そうで、怖い。

 しかし緊張に身体を固くしていたら、彼は絶妙に胸を避けてかき抱いてきた。

(あ、なんだ――今のところは大丈夫そう)

 そう思って、身体から力が抜けた時だった。

「ああ、あなたという人は――」

 そんなジークハルトの声か聞こえた気がしたのも束の間、エリザは身体が軋むほどぎゅぅっと抱き締められて「ぐぇっ」と呼気がこぼれた。