後ろから、ジークシルトが髪を下からゆっくりと梳い上げたのだ。

 首の後ろから、頭皮まで彼の長い指がするりと進んでいく感触が、やけにぞくぞくっと背中に甘い痺れを起こしてきた。

 なんというか、触れられた一部がものすごく変な感じがした。

(え。き、気のせい、かな?)

 エリザは思わず硬直していた。ジークハルトは気付いていないようで、ゆっくりと彼女の髪を梳き続けている。

 気のせいだったのだろうか。そう訝しみつつ、エリザは両手で持っていたティーカップを再び口に寄せ、飲んで――。

 ――すりっ。

 次の瞬間、ジークハルトの指が耳の後ろをくすぐった。

「ごほ!?」

 ぞくんっと震えるようなくすぐったさが走り抜けた。

 思わず紅茶を咽てしまったら、ジークハルトが手を止めた。

「大丈夫ですか?」

 彼女の方を覗き込みつつ、彼が、続いて咳込みだしたエリザの手からティーカップをそっと取り上げ、テーブルへと戻す。

「い、いえ、なんでもないです、大丈夫です……。あの、気になるので、髪を触るのはやめませんか?」