フィサリウスにもっともな指摘をされて、エリザは言い返す言葉も浮かばなかった。

 ケーキを食べつつ、時々ジークハルトに褒めるみたいに頭を撫でられる。

 何が楽しいのか分からないが、仔犬か子猫になった気分をエリザは感じた。

 ケーキを一つ食べ終え、ようやく紅茶を飲めた時にはほっと一息吐けた。腹を抱えていない方のジークハルトの右手が、暇を潰すように髪を梳いているのだが、指に絡める手付きが妙に色っぽくて首の後ろがぞわぞわする気がした。そこから気をそらすそうに話を振る。

「えぇと、ところで殿下、ルディオは大丈夫ですか?」
「ご覧の通り、心身共に力尽きてるよ。何度か意識は浮上したようだけど、この空気でまた気力が奪われたみたいだね」
「……空気?」

 一瞬、エリザは本気で何も頭に浮かばなかった。

 それはなんだろうと思って尋ねようとしたのだが、直後、彼女は女の子みたいな悲鳴が口から出るのを阻止するのに全意識を集中することになった。