泣きたくなったが、ここはもう素直に『あーん』を受け入れるしかない。

(しないと、いつまで経っても終わらない)

 それは、以前も経験済みだった。

 とにかくコレは彼の『ご褒美』だ。自分の言葉の責任を取るべく、エリザは涙する思いで羞恥心も追いやられて、渋々それを口に入れてもらった。

(あ、美味しい)

 好みのケーキが美味しすぎた。

 このチョコケーキ、ほんと素晴らしいお味すぎる。おかげで少し心も少し回復するのを感じて、品がないといわれる仕草だろうと分かっても思わず唇に残ったチョコレートまで舐め取ってしまう。

 それに満足したのか、ジークハルトが「ふふっ」と笑みをこぼした。

「どうぞ」

 彼は、次の一口分をすすめてきた。

 目の前に差し出されたそれを、エリザは素直に口に入れた。更に次も自然と食べてしまい、彼女は美味しさに頬は緩むし、恥ずかしいしで心の中が混乱してきた。

「うぅっ、相変わらずケーキが美味しすぎる……!」
「君も、大概だよねぇ」