「ひぇ」
「ん? どうしました?」
「あ、あああのですね、茶会で何か言われたんですか?」

 ジークハルトの笑顔が、美しい感じのものに変わった。

「ああ『私の方が相応しい』だとか――ご冗談を、と思いました」

 気のせいか、それは作り笑いにも見えた。

(なんか、背中がぞくっとしたような……?)

 エリザは首をゆっくりと捻った。一瞬、ジークハルトが怖い男に感じた。

 だが不意に、横向きに抱えている彼が腕に力を入れ、エリザをもっと引き寄せて彼か頭をぽすんっと肩にあててきた。

「うわっ、何っ」
「はぁ、それに比べて、何をしている様子も癒される」

 何やらジークハルトが独り言を口にする。

「まぁ抱えていて落ち着かれるのでしたら、私も協力した甲斐はありますけど」
「そういう意味ではないのですが」

 ややあって、彼の顔が起こされた。

「はい、口を開けてください、エリオ」
「…………」

 ここで、元の話に持っていくんだぁ……とか思ったのは、エリザの秘密だ。

 彼は、器用にもエリザを安定する位置へと引き寄せながら、右手に持ったケーキ付きのフォークを差し向けてきた。