とはいえエリザは、頭の中まで熱くて、羞恥心で思考もうまく回らない。ジークハルトは元々いい声をしているのだから、甘ったるく囁かれると、何やら猛烈に恥ずかしい気持ちになってくるのだ。

「と、というか、今日はどうして声までこんな威力にっ?」

 思わず、ぱっと顔を起こしてフィサリウスを見る。

 すると彼は組んだ足を揺らし、ティーカップを引き寄せるようにしてソファの背にもたれかかり、小さく息を吐いた。

「あの世間知らずのご令嬢達も、余計なことを言わなければよかったのにねぇ」

 ルディオもある意味被害者だよね、と彼が思い返すように呟く。

 意味が分からない。

 でも、茶会のせいなのはよく分かった。ひとまずジークハルトには、ちょっと〝度合〟を落としてもらおう。

 そうエリザは思った。そのためには、彼に話しをしなければならない。

 恐る恐る視線を向けた。いつもより近い距離からこちらを見下ろしているジークハルトの青い目が、途端に蕩けるような微笑みを浮かべた。