王妃の主催する茶会は、婚約者のいないフィサリウスと令嬢達の親睦を深めるという名目で、いつもより大規模に行われた。

 たった一人しかいない王子の、婚約者選定の一つだ。

 広々とした王妃の宮廷園を利用したそれは、華やかなティー・パーティーといったような具合だった。

 王妃とフィサリウスがテーブルを行き来し、年頃の令嬢達と会話に花を咲かせる。

 彼の護衛騎士であるジークハルトは、もちろんフィサリウスのすぐ後ろに控える形となり、魅力的な家柄と見目もあって当然のように令嬢達は放っておかない。

 元々、ジークハルトは華やかな場所への参加はこれまで控え気味だった。

 女性恐怖症をひた隠しされた彼は、社交界ではさながら『美貌の騎士様』と大変人気である――らしい。

 そう出席前に聞かされたエリザは、そうすると大変ルディオが苦労するのでは、という予感に駆られた。

 そしてそれは、見事に的中することになる。

 そもそもジークハルトは、茶会への護衛を兼ねた出席についても、エリザの与える課題ならと納得して『頑張ります』と言い、断らなかった。