「だから第一王子の執務室で休憩、というのは都合がいいんだね」
「そうなるな」
「でもさ、少し疑問があるんだけど。待ち時間の私の休憩所もそこが指定されているの、おかしくない?」
「え? だって俺ら近衛騎士の執務室だったら、ハロルド隊長の他にも野郎共が出入りするわけで――」

 徐々に彼の言葉が鈍くなってきて、目を合わせて数秒後、ルデシィオがとうとう自分の口を手で静かに覆っていた。

「続きは?」
「あ~……ほら、エリオは呪いの件で殿下に協力しているわけだし、都合がいいんじゃね? それか、ジークって殿下の一番の護衛騎士だから、そっちの執務室で休憩を一緒にすることも多いとか」

 言い方が妙に気になったが、そこで待機時間は終了になった。

「ジークハルト様がいらっしゃいます」

 メイドの一人に声を掛けられて、エリザはルディオと共に立ち上がった。

(そうか。うん、そうなのかも?)

 考えるほどに、ルディオの言葉は正論なのかもしれないと思えてきた。

 フィサリウスの執務室前や休憩室前の廊下は、警備が置かれて通航制限がされているので歩く令嬢の姿もない。

(あ、そういえば――ハロルドさん元気かな?)

 エリザはふと、ルディオの口から出た彼らの上司である隊長と、最近はめっきり会えていないなと思い出した。

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