「最後だから気を引き締めなくちゃ。最後の最後にヘマをして、全部ぶち壊しにしたら大変なことに……」

 組んだ手に、エリザはぶつぶつと独り言を落とす。

「おい、大丈夫か?」
「大丈夫じゃない。ジークハルト様の『おねだり』が飛び出す現場をできるだけ作らないように考えないと」
「あー……エリオも苦労してるよな」
「茶会が終わったらいったん殿下の執務室で休憩を取るんだよね?」

 確認すると、ルディオが腹の上に手を組んで「そう」と頷く。

「私、茶会が終わる頃までには先に執務室に入っていようと思う。うん、ジークハルト様に迎えに来させてはいけない」
「ああ、迎えの時間を短縮させる気か」

 なるほど、とルディオは納得した様子だった。

「それなら、俺が間に合うように書庫まで呼びに行ってやるよ」
「いいの? ありがとう。でもルディオ、 護衛は?」
「俺はいったん、先に退席する令嬢達の案内で抜ける予定なんだよ」

 彼が背もたれから身を起こして、日程について共有した。

 休憩を終えたら、ジークハルトはそのままフィサリウスの次の公務に付き合うことになる。そのあともしばらくは彼に同行だ。