それから少し経った頃、まだ主人達の食事の終わりを知らされないタイミングで、いつもより早い時間にルディオがやってきた。

「よっ、エリオ! とうとう今日だな。蕁麻疹がなくなる薬が来るんだろ?」
「何その命名?」

 軽く食事を済ませたすぐだったエリザは、彼担当のごとく料理長のザジに『あとは任せた』と言われ、玄関ホールに残された。

「術を解除するための魔法薬だってば。あ、いや、この国だと魔法の解除か……とにかく、私に対するジークハルト様の心配症ぶりとかもなくなって、色々と落ち着く日なの!」

 ひとまず彼を客間へと促す。ジークハルトの呼び出しがかかるまでは、二人揃ってそこで待機だ。

「はぁ、そこは落ち着くかどうか俺の口からは言えないなぁ」
「殿下はすごい魔法使いなんでしょ。呪いは絶対解けるよ」
「いや~、そこじゃなくてなぁ」

 一緒に歩くルディオは、前方を眺めつつ煮え切らない回答だ。

 エリザは解呪が試されたら、後日にジークハルトの症状を確認し、どれほどまで改善したのかをフィサリウスに報告する予定でいる。

 彼がエリザを必要としなくなっていた場合の対策も、ばっちりだ。

 その際には、ジークハルトをよく知るセバスチャンたち達に協力をお願いするつもりで、先程ザジにも同じことを頼んでおいた。