(治療係の私が不要になったら、私は、次の国を目指すだけ)

 いつも通り、一人旅に戻るだけ。

 そんなことを思っている間に、今や考え事をしながらも辿り着けるようになってしまったジークハルトの私室に到着した。

「おはようございます」

 ノックして声を掛けると、すぐに内側から扉が開いた。

 ジークハルトは嬉しそうに笑って「おはようございます」と挨拶をしてきた。すでに身支度を整え、ぱりっとした近衛騎士服姿だ。

「昨夜はありがとうございました。おかげで、よく眠ることができました」
「それはよかったです」

 彼の笑顔につられる形で、見上げたエリザもにこっと笑い返した。

「……とはいえ私の方が意外に物語にのめり込んでしまって、ジークハルト様が寝たのに気付けなかったのが少しお恥ずかしいですが……」
「そんなことがあったんですね」

 彼が歩き出す。エリザは、食事の席へ連れていくように同行する。

「寝ていたので気づきませんでした」
「ぐっすり眠っていらっしゃいましたからね」
「あなたの読み聞かせがとてもよかったんでしょうね。今度からお願いしても?」
「えーと……二度目は、ちょっと……」
「きっと才能があるんですよ」
「え、そうですかね?」