「で、ですから私は、心の専門家でもなく――」
「ルディオに、対等な友人としてアドバイスをしてくれた君が希望なのだ!」

 一心に見つめられて、エリザは天井を見上げた。

(畜生ルディオの野郎っ、どんだけハードルを上げて私を紹介したんだ!)

 その間もラドフォード公爵の「一度だけ」「まずは一回」と、子供のような懇願が続いていた。

 平民、そのうえ国籍も持たない自分が公爵に頭を下げ続けられるなんて、刑罰ものに違いない。

(魔物の討伐からの活動証明で、魔法使い名が発行されたのも最近だしなぁ……)

 そう、勝手に【赤い魔法使い】と発行されていた。

 しかし国籍がないにしろ、国内の法律に従うことは義務付けられているはずだ。

「はぁ……分かりましたから、頭を上げてください」

 エリザは顔を戻すと、諦めたようにそう告げた。

「試しに一度、子息様にお会いしてみます」
「本当かね!?」

 期待感に瞳を輝かせる五十代の中年紳士に覗き込まれ、エリザは最大の引き下がれる位置まで顔をよけた。